2022.06.05 / タオルのあれこれ
なぜ、「肌着の糸」でタオルをつくったのか
(文:水布人舎プロジェクトマネージャー 梶 弘幸)
2017年発売以来、当初はなかなか広まらずにいた「やさしい肌着の糸でつくったタオル」。ところが現在は、タオル創造プロジェクト『水布人舎』の中で、リピート率が急上昇中。その理由を、開発秘話を交えながら今回お話させていただきます。
このタオルのループ(パイル)に使われている素材は、歴史ある紡績会社「フジボウ」さんで肌着用途に紡がれている特別なブレンドの綿糸です。その素材をループ(パイル)に100%使用、ロングループで高密度に織り上げたのが「やさしい肌着の糸でつくったタオル」です。
なぜ肌着用の糸でタオルを作ろと思ったのか。
それは良い肌着に必要な機能性が、タオルにも欲しい機能性だったから。
「フジボウ」さんは肌着業界でも著名な紡績メーカー。近年、化繊肌着に押されて綿肌着の生産は大きく下がってきているというお話でした。このまま消費量が落ち込むと本当に良い糸もあるのにその生産の存続すら危うくなってくるのだそう。水布人舎のコンセプトには、メーカーの持つ、埋もれている良い素材や織りなどを見直し、商品化して世に発信していくという理念があります。困っているお話を聞きつつ、どうにか今治でタオルとしてその素材を活かせないかと考え、綿肌着の中でも最上の糸でタオルを作ったらすごくいいものになるのでは!?という話に進展していきました。そして、たどりついたのがこの素材です。
もともとは高級綿肌着用として肌触り・通気性・速乾性・耐久性を考えられて遡ること70年前に研究開発された糸。旧式の紡機で70年間も変わらない品質で紡がれ続けていることで、信頼のおける素材だと確信しました。そして、絶対に良いタオルができるという確信に変わりました。
良いタオルに必要な要素は、肌触りの良さ・吸水性・速乾性、そして洗濯回数が多いため風合いの持続性です。その条件を満たしている糸が違う業界でそんな昔からあったなんて、改めて感激しました。それからその素材を上手に料理しくれる今治のタオルメーカーを選び、ともに商品開発へ。展開する糸番手が細いこともあり、高密度でロングループで織り上げることにしました。後洗いにもこだわり、パワフルな乾燥機を使用。この素材本来の風合いを存分に引き出したいと考えてのアイデアです。
出来上がったタオルは想像のはるか上
タオルを作り続けて20年の自分が最高の拭き心地に出逢えた!
見た目はツヤがあり上質な感じ。触るとほどよくしっとりとしたやわらかさを持ちつつも毛羽っぽさ少ない。甘撚りや無撚糸のやわらかさももちろん気持ちいいですが、やはり毛羽落ちや洗濯していくとやせていくのが残念です。そんな弱点もないまま、十分なふくよかさを持っている。そしてそれは長く風合いが持続する証。実際に使ってみると、このロングループの毛足の長さが「これだ!」という抜群の抜き心地を肌に演出してくれます。
短いループですと点で拭く固いイメージですが、ロングループは面で拭いてくれて遊びがある感じがよいのかも。また、糸の周りを空気が通り、乾きやすくするプラスの効果もありそう。
そして、このタオル、洗った後の方が断然ボリュームがアップします。
一度洗った後の写真がこちら↓
目で見てわかるほど、こんなにも!
洗うことでタオルの表面の長いループ(パイル)がフワッと立ち上がり、ボリュームアップします。
お使いになる前に単品ですすぎ洗いをおすすめします。風合いが増し、不要な毛羽を落とし、ループが引き抜けにくくなります。
ぜひぜひ、この「やさしい肌着の糸でつくったタオル」を使ってみてください。きっと虜になりますよ。